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令和6(2024)年度 研究テーマ

「はじける・つながる・輝く」
~深い学びを実現する体育学習の追究~

1.はじめに

 新学習指導要領では、体育科の目標は以下のように示されている。

体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を見付け,その解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)その特性に応じた各種の運動の行い方及び身近な生活における健康・安全について理解するとともに,基本的な動きや技能を身に付けるようにする。

(2)運動や健康についての自己の課題を見付け,その解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝える力を養う。

(3)運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し,楽しく明るい生活を営む態度を養う。

 この3つの資質・能力を育むため、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が求められている。

 これまで奈良県小学校体育研究会では、すべての子どもたちが楽しく運動に取り組むことができる体育学習の創造を目指して取り組んできた。体を動かすことが大好きで、運動の得意な子どもが夢中になれるだけではなく、運動が苦手で消極的な子どもを含むすべての子どもたちが、楽しく体を動かすことができ、”もっとしたい”と思うようにするためにはどのような指導法の工夫が有効なのかについて考えてきた。

 平成30年度より「豊かな『つながり』を大切にした、深い学びのある体育学習」を研究主題とし、様々なつながりを大切にしながら「わかる」「できる」「関わり合う」授業を目指して、実践を積み重ねてきた。「子ども」「仲間」「教師」「運動」の4つの要素を密接につなげることで、その中心にいる「子ども」が運動の楽しさを味わい、体力を高め、生涯にわたって運動に親しもうとする未来の「つながり」ができるのではないかと考え、研究を進めてきた。

 その中で、子どもの学習意欲を高める教材教具、場づくりやルールづくり等について様々な工夫を凝らした。また、子ども同士が互いに深く関わりをもてるような話し合いや見合い学習の場を設定した。多様な指導方法を工夫する中で、子どもたちの体育学習に対する興味・関心の高まりがうまれ、一人一人がやりがいを感じ、「運動」や「仲間」とつながり、未来や生涯の能動的な学びへとつながっていくような体育学習の指導法を構築することに一定の成果を得ることができたと考える。一方で課題も見えてきた。例えば、見合い学習の場において、アドバイスの質の高まりが見られず形式的なつながりになっている部分が多く見られた。子どもたちが自ら課題を解決したり主体的に関わりをもったりすることができれば、より深いつながりになるのではないかと考えた。また、子どもたちが夢中になって運動に取り組んだり、できた喜びや楽しみを感じて笑顔がはじけたりするような、仲間との関わりや集団としての育成、そのための指導の在り方について、より深く追究していく必要があると考えた。

2.研究主題について

 令和3年度より、研究主題を「はじける・つながる・輝く」とし、主体的な学び、対話的な学び、深い学びの集団化の視点で指導法を工夫し、子どもたちがはじけて運動に取り組み、共に考え、つながりを深めながら、大きな輝く集団になっていくことを目指して、以下の通り研究を進めている。

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 「はじける」では、一人一人の子どもたちが、主体的に心と体をめいっぱい使って夢中になって活動する姿や、苦手なことや新しいことに挑戦する姿を目指している。特に運動が苦手で殻に閉じこもっている子どもが、その殻を破って運動に取り組もうとしたり、できなかったことができるようになったりすることも「はじける」姿の1つとして捉えている。また一人一人が向上心をもって粘り強く取り組み、新たな課題を見付けて取り組む姿でもある。

 「はじける」の手立てとしては、実態に即した単元構想のもと、”やってみたい”と思えるような導入やスモールステップの場による意欲の喚起や、教具やルール作り等、すべての子どもが安心して主体的に学習を進められるよう、指導法を工夫している。

 また、本研究会では、できた喜びやうまくいかない時の悔しさ、“もっと上手になりたい”“次こそは勝ちたい”という子どもたちの様々な気持ちを体育授業において大切にしている。子どもたちが運動を楽しいと感じ熱中すればするほど、また自分なりに努力すればするほど、喜びが大きく深くなると同時に、こだわりが強くなったり悔しい気持ちになったりすることもある。それゆえ子どもたちのがんばりが、記録や勝敗等の結果として表れなくても、教師が学習過程そのものを価値あるものとして認め、励まし、称賛し続けることを通して、心の成長という側面からも子どもたちの「はじける」姿の実現を目指している。

 「つながる」では、子どもたちが対話を通して自己や仲間とつながり、思考を広げたり深めたりして共に考えを積み重ねていく姿を目指している。一人ではどうしようもない場面や課題に直面した時、仲間と一緒に考えたり、アドバイスをし合ったりすることで解決できることもある。運動を通して子どもたちの絆が深まったり、運動との多様な関わり方をすることで活動の幅を広げたりする中で、達成できた時の喜びや楽しみはより大きなものとなり、子どもたちの動きや笑顔はさらに広がっていくと考える。

 「つながる」の手立てとしては、自己や他者との対話を通して思考し、表現することのできるしかけの設定、ペアやグループでの活動の充実、作戦の相談や双方向のアドバイスが充実する単元計画や仕組み作り、意図的な場づくり等の工夫に関する指導法を追究している。

「輝く」では、子どもたちがコツやポイントについて理解したことを身体活動を通して実感する姿、課題を見付け、解決に向けて何度もあきらめずに自ら進んで運動に取り組む姿、個人の「あっ!そうか。このことだったのか!」等を共有し、集団として学びが深まっていく姿を目指したい。そして仲間と共に、分かった喜び、できた嬉しさや体を動かす楽しさを感じて体育学習に取り組む、きらきらと「輝く」子どもたちの姿を目指したい。そして、深い学びを通して「輝く」子どもたちは、さらに運動に熱中し、共に課題を乗り越え、運動の楽しみや喜びを共有する仲間へと成長し、より大きく「輝く」集団になっていくと考える。

 「輝く」の手立てとしては、ワークシートの工夫、個人が考えたことや分かったこと、身体活動を通して気付いたことを仲間に共有できる場の意図的・効果的な設定や、思考を促す教師の声かけ等の工夫についての指導法を追究している。

はじける

【目指す子どもの姿】

◇主体的に夢中になって活動する姿。

◇「わかった!」「できた!」と喜ぶ姿。

◇”やってみようかな”と前向きに挑戦する姿。

◇嬉しさ、悔しさを大切にし、”もっと上手になりたい””次こそは勝ちたい!”と向上心をもって粘り強く取り組む姿。

【手立て】

・実態に即した単元構想。

・体力や技能の程度、障がいの有無等に関わらず、すべての子どもたちがやってみたいと思えるような導入の工夫。

・主体的に楽しんで運動に取り組めるような活動と場の設定。

・自身の学びや変容を自覚できる適切な場面の設定。

・スモールステップによる意欲喚起。

・教具の工夫 等

つながる

【目指す子どもの姿】

◇子どもたちがそれぞれの考えをもち、共に考え、課題を解決する姿。

◇友達との協働により、自己の考えを広げ深めようとする姿。

◇運動を通して子どもたちが絆を深める姿。

◇運動有能感を高め、自己に応じた運動との多様な関わり方をすると共に、活動の幅を広げる姿。

 【手立て】

・対話を通して思考し表現することのできるしかけの設定。

・ペアやグループでの活動の充実。

・作戦の相談や双方向のアドバイスが充実する単元計画と仕組み作り。

・子どもたちがつながるような意図的な場づくり。

・すべての子どもが活躍できるルールの工夫 等

輝く

【目指す子どもの姿】

◇コツやポイントについて理解したことを、身体活動を通して実感する姿。

◇「わかる」と「できる」がつながり、思考を深める姿。

◇「見方・考え方」を働かせ、知識を相互に関連付けてより深く理解する姿。

◇個人の「あっ!そうか。このことだったのか!」等を共有し、集団として学びが深まっていく姿。

 【手立て】

・活動を振り返ることができるワークシートの工夫

・考えたことや分かったこと、身体活動を通して気付いたことを共有で

・きる場の設定。

・思考を促す教師の声かけの工夫 等

3.研究の進み方について

 奈良県小学校体育研究会では、研究領域を「体つくり運動部会」「器械運動部会」「陸上運動部会」「ゲーム・ボール運動部会」「表現運動部会」の5つに分け、それぞれの部会で委員長を中心に研究を進めている。毎年、研究授業を実施し、指導案検討(2回)、研究授業(研究協議)を行っている。奈良県教育委員会より指導主事を招聘し指導助言をいただきながら取組を深めている。

 全体の研修として、年2回、前期研究大会・後期研究大会を行っている。前期研究大会では会場校の公開授業、講師を招聘しての講演会、後期研究大会では会場校の公開授業と、各郡市の実践発表を行っている。県内を郡市別に20のグループに分け、毎年研究主題に沿った取組を実施し、その内容を「実践集録」にまとめ、県内各校へ配付している。その中の4つのグループ(郡市)に取組を発表してもらい、取組を共有したり、課題を一緒に考えたりする機会としている。

 また、これら1年間の取組を「研究紀要」として3学期にまとめ、県内各校へ配付している。

 このように取組を積み重ねながら、今後もすべての子どもたちが楽しく学習に取り組める体育の学習、仲間と一緒に深める体育の学習、集団として高め合える体育の学習、「はじける・つながる・輝く」子どもたちの育成を目指して研究を進めていきたい。

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